電話はつながる。相手の声も聞こえる。それなのに「声が聞こえない」「途切れる」と言われる——。
この症状で修理に持ち込まれる端末のうち、実際にマイクが壊れていたのは半分もなかったというのが、筆者が修理店を経営していたころの実感である。残りはケースやフィルム、接続先の設定、汚れの詰まりで説明が付いた。
先に知っておきたいのは、iPhoneのマイクは1つではないということだ。どの場面で使われるマイクかによって、原因も対処も変わる。だから、修理を考える前に「どのマイクが悪いのか」を切り分けたほうが早い。30秒で終わる。
マイクは場面ごとに使い分けられている
iPhoneには複数のマイクが載っていて、使う場面で切り替わる。おおまかには次のとおりである。
- 本体の下部:耳に当てて話す通常の通話、ボイスメモ
- 本体の上部(画面側):スピーカーフォン、前面カメラでの動画、FaceTime
- 本体の上部(背面側):背面カメラでの動画撮影
「通話だけ聞こえない」「スピーカーにすると聞こえない」と症状が分かれるのは、このためである。全部が同時に壊れることは、水没でもない限りまず起きない。
30秒でできる切り分け
Appleの公式ヘルプも、同じ考え方で切り分ける手順を案内している(Apple「iPhoneのマイクが機能しない場合」)。順にやってほしい。
1. ボイスメモで下部マイクを確かめる
ボイスメモアプリを開いて録音ボタンを押し、本体の下部に向かって話してから停止する。再生してはっきり聞こえれば、通常の通話で使うマイクは生きている。
2. 前面カメラの動画で上部マイクを確かめる
カメラアプリを開き、本体の上部に向かって話しながら動画を撮る。再生して聞こえれば、スピーカーフォンやFaceTimeで使うマイクは生きている。
3. カメラを切り替えて、もう1本撮る
カメラ切り替えボタンでもう一方に切り替え、同じように上部へ向かって話しながら撮影する。これで3つとも確認できる。
結果の読み方
3本のうち、聞こえなかったものがあったかどうかで、次の行き先が変わる。
- どれか1つだけ聞こえない:そのマイクの問題である。塞がっているか、汚れているか、壊れている。次の章へ進む
- 3つとも聞こえない:マイクそのものより、設定か接続先を疑う。水没の心当たりがあるなら修理を検討する
- 3つとも問題なく聞こえる:マイクは生きている。相手に届かない原因は別にある
3つ目に当てはまる人がいちばん多い。筆者の店でも、ここで帰っていただくことが何度もあった。
マイクが生きているのに届かないとき
ケース・フィルムが穴を塞いでいる
Appleの案内も、最初に保護シート・フィルム・ケースを外すことを挙げている。買い替えたばかりのケースで急に言われるようになったなら、まず外して通話してみてほしい。穴の位置が数ミリずれているだけで、こもった声になる。
Bluetooth機器につながっている
ワイヤレスイヤホンや車のオーディオに接続されたままだと、そちらのマイクが使われる。カバンの中のイヤホンが拾っていれば、当然こもる。通話中に接続先を確認するのが確実である。
通話中にミュートになっている
単純だが、実際にある。通話画面のマイクのボタンが有効になっていないかを見てほしい。
特定のアプリだけ届かない
通話は問題ないのに、あるアプリでだけ声が届かないなら、権限を見る。「設定」→「プライバシーとセキュリティ」→「マイク」を開き、そのアプリが有効になっているかを確認する。一覧にアプリ自体が出てこない場合は、アプリ側の問題である。
掃除で直る場合と、やってはいけない掃除
ポケットの綿ぼこりや皮脂が穴に詰まって、声がこもることは珍しくない。Appleも開口部の掃除と異物の除去を案内している。
ただし、先の細いものを差し込むのは避けてほしい。マイクの穴の奥には薄い防塵のメッシュがあり、針や安全ピンで突くと破れる。破れると、こもりが直るどころか砂が入って悪化する。
やるなら、乾いた柔らかいブラシで表面をなでる程度にとどめる。エアダスターで強く吹き込むのも勧めない。
修理に出す前に確認すること
切り分けの結果が「どれか1つだけ聞こえない」で、ケースを外しても掃除しても直らないなら、修理の段階である。その前に、次の2つを確認しておくと話が早い。
- 水濡れの心当たり:マイクの不調は、水没のあとで遅れて出ることがある
- 落下の心当たり:内部のケーブルが外れかけている場合がある
どちらも、修理店に伝えるかどうかで診断の速さが変わる。伏せる理由はない。
よくある質問
再起動で直ることはあるか
ある。一時的な不具合であれば再起動で戻る。切り分けの前に一度試しておくと、無駄な手順を減らせる。
ボイスメモでは聞こえるのに、通話だけ届かないのはなぜか
マイクは生きているということなので、接続先か設定を疑う。Bluetooth機器の接続、ミュート、通信環境の順に確認してほしい。
マイクの穴はどこにあるのか
本体の下部、受話口のあたり、背面カメラの近くにある。機種によって数と位置が違うので、穴を探すよりも、前章の3手順で切り分けるほうが確実である。
水没させたあとから声が届かない
マイクの内部が腐食している可能性がある。乾かしても戻らないことが多いので、早めに点検してもらったほうがよい。放置すると範囲が広がる。
片方のマイクだけ壊れていても修理は必要か
使っていて困らないなら、急ぐ必要はない。ただし、下部のマイクが壊れている場合は通常の通話に直接響くので、優先度は高い。
まとめ
- iPhoneのマイクは複数あり、場面で使い分けられる。全部が同時に壊れることはまず無い
- ボイスメモ1本+動画2本で、どのマイクが悪いか30秒で分かる
- 3つとも聞こえるなら、原因はケース・フィルム・Bluetooth・ミュート・アプリの権限のどれか
- 掃除はブラシで表面まで。針やピンを差し込むと防塵メッシュが破れる
- 1つだけ聞こえず、外しても掃除しても直らないなら修理。水濡れと落下は伝える



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